街道

三方原追分　から　天竜川西岸　まで

　本坂通（姫街道）の東側には、３本の道がある。
　池田道　：　東海道筋の安間から、市野宿を通る道。
　本坂道　：　この道も、安間の北側の池田から途中で、市野宿の手前で合流する道もある。この道は、江戸初期より中期にかけて多く利用されていた。 と言っています。
　浜松道　：　浜松宿から三方原を北進し、三方原追分において安問起点の道と合流する。この道は、江戸中期より後期にかけて利用が増えていった。
安問起点の本坂通は、安間一里塚東側より東海道と別れ北進する。この道は、鳳来寺道として、また半僧坊道としても利用されていた。
　東海道安間を起点とし市野宿を経由する本坂通も、浜松宿を起点とする道筋も共にほとんどが整備され、昔の面影はない。旧道幅のまま残っているのは浜松市小池町地内大養院前より江原橋に至る約１５０メートルと、同市有玉西町地内の宇藤坂とその坂上にかけての３５０メートルなどである。

東大山一里塚は西側はほぼ原形をとどめているが、東側は一部が欠損している。

　浜松市葵町から大山町にかけての松並木であるが、現存しているのは片側（西側）のみである。しかし、枯れたり、老化した木について伐採し、新しく松を植えて景観の維持につとめている。

渡船場　

天竜川西岸の渡船場は上流から下流に向かって三ヵ所あった。年代や流路の変化など にともない若干の位置の変化はあったと考えられる。しかし、重なる天竜川堤防の改修にともなって、往時の渡船場はすべて現在の河川敷の中となっていて渡船場の遺構全く残っていない。
概略の位置は、「上之渡船場」は浜松市白鳥町、「下之渡船場」は小野町、「中之渡船場」は、白鳥町と中野町 との境界の辺りに相当する。
池田道（池田近道）を通って本坂通に出る場合は、渡船場か ら富田村（現：白鳥町）を通って市野宿に向かった。しかし、本坂通に行く大部分の旅人は、渡船場から天竜川西岸堤を南下し中野町村を通り、正規の本坂通起点である安間新田村から東海道と分岐し北上する道筋を進んだ。

　渡船高札場

高札は、渡船料などに関する事柄が書かれており、川高札と言い、天竜川西岸は「中野町村東往還左側」に設けられていた。また、渡船事務を取り扱った川会所も中野町村地内にあった。

完全に現在の河川敷のなかにとり込まれてしまっているため、高札場、川会所の位置は判らないが、渡船場から中野町の家居の東端を結んでいた旧天竜川堤にあった思われる。

　　　年　月　日　撮影

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安間を起点とする道

三方原追分。	追分一里塚。ここは南側の塚のみが残存			。	右手が姫岩。
薬師堂の左は秋葉常夜灯。	気賀に向かって左に薬師堂。	この坂を下り、右へ小川を渡る	右手が姫街道になる。	車道に出て石畳が終わる。	この様な石畳が続く。

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「宇藤坂」を上り切った所に右に入る小路が有り、此処を右折し約100ｍ程入った所に坂上田村麻呂伝説の「俊光霊社」（33）がある。坂上田村麻呂将軍の名は東海道を歩いた時に何度も聞いた。街道歩きをした者にとって無縁の人ではない。田村麻呂縁の社と知れば通り過ぎる訳にはいかない、訪れる事にした。
地図を見間違え、少し先に有る「最古の道標」手前から右に曲り、人に尋ねても分からず、東名三方原PA近く迄行ってしまい、行き過ぎて随分と回り道をした。やっと見つけた霊社はラブホテル脇に遠慮がちに有った。戦前には教科書にも載ったと言われる文武両道の一方のシンボル（文は菅原道真、武が坂上田村麻呂）縁の社にしては一寸寂しい。
しかし、明治時代に地区の神社を1ヶ所に集め、祀神は郷社有玉神社が出来た時に移され現在に至っているという。祀られていたのは田村麻呂ではなく、子「俊光」であった。霊社前の木柱には「旧俊光将軍社」と書かれていた。俊光についても地元有玉という名称の由来に繋がる伝説もあるようだ。
霊社から「宇藤坂」を登り切った地点迄戻る区間はあっけない程短かった。初めからこの道を通れば、寄り道と言えない程である。迷った為に40分以上時間をロスしたが、田村麻呂縁の社を拝めて良かった。

「姫街道」に戻り西進する。欠下公会堂西隣には常夜灯があった。県道261号に合流し右折し、右方向へ車の多い道を進むが、合流地点手前には「最古の道標」（34）、「右きが　かなさし　左庄内道」と刻まれており、天保3年（1832）建立とある。年代も差程古いとは思えないが「姫街道」の遠江側に残存する道標の中では最も古いという。

市野宿
　本陣があり、旅籠もあったものと思われるが、旅籠、問屋場等については史料がないので不明である。本陣は、江戸末期と明治中期の火災で当時の建物が焼失したが、本陣（斎藤家）には若干の古文書および諸侯宿泊の際、門口にかかげた関札が残されている。
　宿は本坂通に沿って、ほぼ東西に走り、東から「東宿」、「中宿」、「新丁」と呼ばれた。 新丁は江戸中期以後町並みである。宿の特色の一つは宿全休が大きな桝形をなしている点てある。安間川をわたり市野宿に入ると左に大きく折れ、新丁で、今度は右に桝形をつくっている。　
　宿では、ある程度の商業活動のあった思われる。沿道の村は、「農業之外、男ﾊわら細工いたし、女は木綿をおり、其外仕馴たる手業なし」（『大概帳』による）とあり、農業を主としていたようである。

八丁とうも
市野宿と小池村（小池町）との間の八丁（約0.87km)の田圃（当時）の１本道である。

小池一里塚
日本橋より、距離65里、約260kmの位置にある。この一里塚により、この集落が小池村一里山とよばれてきた。

長上郡下村（浜松市有玉南町）地内で、浜松宿より北に延びてきた秋葉街道と交差する。

馬込川に架かる五枚橋を渡り、宇藤坂にかかる。三方原台地への登り坂である。

坂上に達すると道が二本に分岐する。右にとると本坂通、左が浜名湖東岸庄内地方に通ずる庄内道である。分岐点に天保三年に建てられて道標がある。分岐点からは三方原台地の上の道となる。

三方原追分で浜松宿から北にのびてきた本坂通と合流する。気賀から南下してきた場合には市野宿側に行くか、浜松宿側に行くか、まさに追分にあたる。

道標。　天保三年の道標には、「きが　かなさし　庄内　道」と刻まれ、完全な形で残っている。

大山一里塚を過ぎればほどなく大谷坂である。敷智郡大山村（浜松市大山町）から引佐郡前山村（引佐郡細江町）へ入る。

　浜松宿における本坂通起点は浜松城追手門前の高札場脇。追手門前の東海道も桝形になっているが、その桝形の西側より、ひくま坂を上り、高町坂上に出る。両側は侍屋敷があったところ。名残番所は侍屋敷の北はずれ、本坂通の往還沿いに設置されていた。道は北に進みほどなく敷智郡名残追分新田 （浜松市鹿谷町）である。ここにも分岐点があり、左にとると庄内方面に至る。 本坂通は直進、古戦場跡犀ヶ崖の際を通り、あとは三方原追分までほぼ一直線である。途中小豆餅地内で桝形になった場合

。橋の名称は川に置かれた石の上に5枚の板を並べた仮板橋であった為と言われている。

 

坂の北側には「欠下城址」があり、此処からも三方原台地へ上がる坂道（欠下坂）が有り、今年ウォーキングで皆と此処を訪れたが東名高速道路の直ぐ南側に位置し、城跡には雑草が生茂り、遺構等は不明であったが坂は残っていた。但し、「姫街道」との接点は工場等の敷地になっているようで分からなかった。
また、城跡へ上る麓から分岐して「宇藤坂」へと続く坂道もあり、この坂を「大菩薩坂」（右）という。武田信玄が「風林火山」の旗を靡かせ3万の軍勢を引連れ、三方原で家康との合戦に向う時は「大菩薩坂」を上り三方原へと向ったと言われている。

薬師堂を通り過ぎて、東へ向かう

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「小池町交差点」を直進して、次の信号機のある五差路を県道は斜め右方向へと続くが、「姫街道」は直進し、やや細い道へ進む。
入った所の右には「大養院」があり、山門右には屋根に「シャチホコ」付の立派な龍燈が建てられている（29）。内部には秋葉灯籠が置かれているのが普通と言われるが此処の秋葉灯籠は行方不明だという。中を覗いて見た、石柱が二つ置かれているが中はハッキリとは見えなかった。なお、龍燈とは資料によれば灯明堂の事である。しかし、立派な龍燈である。

街道はこの先、「大養院」西約150ｍ地点から遠鉄「自動車学校前駅」北側迄の約500ｍ間が工場、住宅地になって完全に消滅しており、現存していないので貉川手前の小路を右折し、県道に出た。

	江戸から65番目の小池一里塚。塚は無く石碑だけ。		左は八丁とうも（とうも＝田面）と言われる長い直線の道。右は熊野神社。その境内にある秋葉燈。

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この後、道は左にカーブし再び安間川を渡り「姫街道」最初の宿場「市野宿」に入る。
「市野宿」は浜松宿が発展し浜松から「本坂通」を通行する旅人が増えた為に次第に衰退したという、道幅は狭くなるが、宿場の面影は殆ど無い。
斉藤本陣跡や、近くに有ると言われる「半僧坊」への里程石も不明だった。旅籠、問屋場については資料が無く、その規模は明確ではない。東を東宿、中間を中宿、西を新丁と呼ばれたが、家数、人口等宿場規模も不明である。
信号機のある「市野交差点」を通り次の交差点を左折し、直ぐ斜め右方向へ。枡形になっており此処が「市野宿」西の入口かもしれない。僅かに進み右折すれば右には「熊野神社」がある。

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高札場西には天竜川流域の治山治水に偉大な貢献をした「金原（きんぱら）明善生家」（24）と「明善記念館」が向かい合って存在している。 建築時期は江戸後期と言われ、建築坪数は母屋、離れを含め80坪余、屋根は慶応2年に瓦に葺き替えられたという。

右に「松林寺」、本堂左の薬師堂は、説明板によると将軍徳川家光が時の浜松代官に命じて建立した物という、江戸前期の建築物である。向には「かやんば高札場跡」、「萱場」が訛ったものらしい。