街道

引佐峠　西側

右に入った先右手には弘治2年（1556）建立の「慈眼寺」（じげん）（31）が有る。無住寺であるが、浜松市指定文化財「庚申堂格天井絵」には福田半香や三ケ日宿問屋役人石川晶斎等の描いた花鳥図があり、12年に1度の未年に開帳されるそうだ。此処で小休止。絵画には無知無縁の自分であるが、福田半香の花鳥図となれば一度拝んでみたいものである、素晴らしいに違いない。（代官屋敷～慈眼寺迄、0.4ｋｍ

　象鳴き坂

引佐峠から西へ下る坂道は急で曲が りくねっている。最も急な坂が象鳴き坂である。

享保１４年（1729）、清国商人が朝廷へ献上した南越（ベトナム）の象が京に着き、天覧の後、江戸へ送られる途中に姫街道を通った。

「本坂往来留書」には、「広南国より江戸江下り牡象一匹吉田泊五月九日気賀泊り、長崎官物御奉行高木作右衛門様内小野田八右衛門、福田権助、調使一人清川永左衛 門、象使役四人、以上七人、宰領七人、都合十四人、駕籠三挺上下之者九人、 駄荷五匹、気賀泊り」とある。

気賀本陣の西に象小屋を作ったが、その大きさについて「象小屋新規出来、但、二間、三間」であったと いう。また象小屋の材料とか餌は地頭が心配したという。象の重さについては「御先触休泊御宿割帳」に、船渡所を「馬五匹乗候之船を可被致用意」と 記されている。

前記の「留書」によれば気賀村の庄屋が引佐峠まで象を出迎え、翌日には浜松まで送っていった。その道筋は金指御陣屋の下を通り、祝田一本松へ上がって三方原へ進んだ。

石投げ岩

姫街道沿いに１ｍ四方位の 大きな岩がある。この岩に旅人が石を投げ上げると無事峠越えが出来るという事であった。

大谷一里塚

江戸から７０里目の一里塚であ る。大谷村と佐久米村の境にある。 塚は現存しない。南側に「旧姫街 道　一里塚址」の石碑がある。 「大概帳」に「木立左無之。右松」 と記されている。　塚の大きさは５ 間四方であった。 大正１５年の調査記録には，南側は一部切り崩され，北側はほぼ 残ると記されている

峠道から一転し、明るく広々とした感じになる。江戸から70番目の「つくしんぼ江戸70里」と呼ばれた「大谷一里塚跡」（30）、附近はみかん畑が続き長閑なところである。別名を六部さまとも呼ばれている「黒坂の森」を左に見て直進、やや広いT字路を左折し、大谷川を渡る。直ぐ右に「大谷代官屋敷」と、説明板がある。領主大谷近藤氏の代官として、この地の政務を執った大野家の屋敷で現在も子孫の方が居住している。（石投げ岩～大谷代官屋敷迄、2ｋｍ）
近くの大谷近藤氏の陣屋跡を、犬に激しく吠えられ乍ら探したが分からなかった。
少し先の右手の少し高くなった畑に「安形伊賀守屋敷跡」、更に少し進みY字形分岐を右方向へと入る。左へ進めば「三ヶ日IC」に出てしまうが「姫街道」の案内標識が随所にあり間違える事はない。

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少し下った左手には「石投げ岩」があり、当時の旅人が峠の無事通行を願って、石を投上げたと言われている。岩は想像していたより街道の直ぐ脇に有り、投げ上るというより置くに近い感じであった。自分も勿論、無事を願って投げた。曲がりくねった坂道を下り無事麓に下りる事が出来たようだ（29）。「石投げ岩」のお陰かもしれない。（引佐峠～石投げ岩迄、0.6ｋｍ）

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此処からは下り坂になる。享保14年3月（1729）清国の商人鄭太威から八代将軍吉宗への献上品として長崎に着いた象（二頭到着したが一頭は上陸後死亡）が江戸へ送られる時、あまりの急坂に象が悲鳴をあげた所と言われている「象鳴き坂」（28）。
当時の人々は象を見るのが初めてであり、「近国より不残見物ﾆ出・・・」という。また、「御用の象」という事で粗末には出来ず、気賀の村役人や庄屋が「引佐峠」迄出迎え、５月8日気賀で一泊後、浜松迄送って行ったという。確かに急な坂道である。（長崎奉行配下の役人と象使い、通訳、警護の幕府役人等の象一行は江戸に５月25日着、２７日江戸城にて将軍に謁見、６月11日二度目の謁見をした後、中野村の百姓源助に払い下げられ、見世物として使用、寛保２年（1742）病死したとされている）

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引佐峠　東側

　気賀と三ヶ日の境にある海抜２００メートルの峠。 本坂通では本坂峠につぐ難所であるとともに、 景勝の地として知られていた。坂道は急なところが多く 、石畳が形成されているところがあった。 坂の途中の平石御休憩所（姫岩）があり、大名行列等の通行の折には 湯茶の接待がおこなれた。

　石畳（引佐峠）

　岩根から引佐峠までの間で古い石 畳が残るのは、引佐峠を下ること１００メートルの間と、姫岩付近のおよそ ５０メートルの二ヵ所である。道幅は ともに１メートル前後である。 この石畳は昭和二十年代に地下ケーブ ルを敷設した際に、一度掘り起こされ ている。なお明治時代に敷いた石畳も みられる。

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　引佐峠

　　引佐峠手前100mは古い石畳が続 く。石段を上りきった所に休憩所があ り，さらに上ると峠である。 「大概帳」に「気賀村内引佐峠之難 所弐ケ所」「眺望絶妙之風景，本坂越 之景地なり」と記されている。現在は 雑木で覆われ。見晴らしはよくないが， 昔の面影を残す場所である。

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「姫街道」は岩根川を渡り、左方向へ道なりに進む。その先で右にカーブし標識に従い石畳の道に入る。「引佐峠」への始まりであろうか。先程の石畳より古く感じ、樹木が多い分情緒があり、素晴らしい雰囲気である。
やがて「姫岩」と呼ばれる休憩所に着いた（24）。街道を通行する大名行列に近藤家の家臣が此処まで出向き、湯茶の接待をした所である。カマド跡もあったが、北側の農道の拡張時に取壊されて今はない。説明板によると、かつては此処から浜名湖が見え風光明媚な所とされ、お姫様も景色を楽しんだ。とされていたが、今では樹木に遮られ何も見えなかった。