街道

大里峠_三ケ日宿

この先「姫街道」は東名高速道路に遮られ通行不能となっている。標識に従い東名に沿って西方面に迂回し、左折して東名下をくぐり、南側に出る。100ｍ程進んでから左手の「姫街道」の続きと思える附近を見た。此方からは高速道路により行き止まりになっているが、行止まり地点からそれらしい道があり、直ぐ先で合流していた、どうやらこの道が本来の姫街道らしい。高速道路に分断されてしまったため、現在のような形に区画されたものと思う。（下図点線部分）

暫く歩き、再び東名下をくぐり左折、高速道路北側の一段と高くなったところを東名に沿うように進む、途中には「大里（おおり）峠」の案内板がある。この峠は、雨天時には道路が川のようになるので「わる坂」と呼ばれていた小難所であったが、現在では途中で通行止となっているらしい。
今度は「大里歩道橋」（32）で南側に渡る。此処からは暫く左右一面のみかん畑の中をのんびりと歩く事になる。街道脇に紅白の垂れ桃であろうか満開に咲いていた。石畳も素晴らしかったが、誰もいない広いみかん畑の中をひとり悠々と歩くのも、また良いものである。此処でも街道歩きの醍醐味を満喫した。今日は満喫する事ばかり。

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「宇志川」を渡り、少し坂を上り左に、茶屋跡、高札場跡の説明板は有るがそれらしい面影はない。左からのやや広い道と合流した後、暫く歩き道はY字に分岐する、此処を左方向へ進むが、左には江戸から71番目の「三ヶ日一里塚跡」（33）があり、この辺りから三ヶ日宿となるようだ。（慈眼寺～三ヶ日一里塚跡迄、3.1ｋｍ）
数少ない旅籠屋で千鳥屋と呼ばれた旅籠跡は見落としてしまった。右手の問屋場跡を見て「四辻交差点」へ、同交差点北東の「四辻坂会館」は、かつて呉服問屋だった堂々たる風格のある建築物である。そして僅か先、左手「小池本陣跡」前に到着。

三ヶ日宿では本陣以外の旅籠は少なく小さい宿村であったが、幕末の志士清河八郎の日記「西遊草」にも記されているように「三ヶ美（日）も入海の奥にて船通路の所なり されど野中の宿なればいとさみしき体なり・・・此処は秋葉山へ往来の宿にて 往来もややあり・・・」 秋葉山への参詣の道として三河国以西の人々の多くは三ヶ日宿を利用した様である。
また、清川八郎が三ヶ日で投宿した旅籠と同名の店舗が、同町内に存在するが、旅籠との関連は不明だという。（※表紙の頁で述べたように、この時清河八郎は、女手形を持たない母親のため、三ヶ日で舟を雇い「関所破り」を敢行している）

姫街道の旅2日目は此処迄と、「四辻交差点」近くのバス停から帰途についた。

なお、宇志川過ぎから右に折れ、北に約1.5ｋｍ程のところには平安初期の「瓦塔遺跡」がある。三ヶ日町の古刹、摩訶耶寺（まかやじ）は、創め引佐町奥山の山中に在って真萱堂（まかやどう）と称していたが、平安初期に千頭峯に移されたと伝えられ、その遺跡が「瓦塔遺跡」である。
瓦塔は、昭和33年に発掘され実物は奈良国立博物館にあり、学術的にも大変に貴重なものだという。

過日、浜松市の政令都市移行記念行事の一つとして、約2ヶ月間、市博物館に里帰り展示されることになった。この事を知人から教えて頂き見学したが、その優美な姿、形に魅了させられた。
現地を見たくなり後日訪ねてみた、浜名湖が見渡せる風光明媚な山中にあり、復元された実物大の瓦造模型があった（34）。平安初期の石段も発掘され現存しており眺望と共に素晴らしい所であった（35）。写真は後日撮影分。

三ケ日宿

　引佐峠を下って、大谷、駒場を過ぎ、大里峠を越えて、宇志の村落を出た ところより三ヶ日宿は始まる。三ヶ日宿の入口に江戸より７１里目の一里塚 がある。宿の南側に三ヶ日池を水元とする神明川が流れ、その南を猪鼻湖が 岸を洗う。三ヶ日宿は西町と東町に別れ、東町には石川家の問屋場がある。 それと軒を並べるように旅寵が並んでいた。　稲荷山 を北に見てなだらかな坂を上ると西町に入る。ここには小池八左衛門家の本 陣と、石川家の脇本陣がある。宿内では地形的に一番高所で、宿の出口より 本坂峠が程近くに見える。宿内街道は釣村境より宇志村境まで８町５０間、 東北５町余の町並が続く。天保１４年（１８４３）の段階では宿内惣家数９３軒、４６７人が住んでいた。

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　姫街道の交通が激増したのは宝永四年（１７０７）十月の東海道大地震以後と思われる。それより六〇年後の明和元年（１７６４）になり、漸く実情 と必要性が認められ、老中連印の証文と道中奉行の触書を以て伝馬宿次御用 が命じられた。宿の西には難所本坂峠をはじめ幾つかの峠があり、交通上の 要地で人馬の需要が多かった。

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産業の特色 　『大概帳』によれば、宿は街道の要地として両側に家が並び、本陣、脇本陣、問屋場、旅龍等があり、「旅龍屋は旅人の休泊を受、又は食物を商ふ茶 店有之」とあるように、諸商人の活動も活発であった。その周辺では農業が 行われ、米・野菜以外に蘭草の栽培や柑橘が盛んであった。さらに、天保期 には大幸寺住職の勧めで甘藷、西瓜が主要な産物となった。また、猪鼻湖周 辺の各村落では、農業のかたわら漁業が行われ、　　、ぼら、黒鯛、ぴん鯛、うなぎ、ぎま等、あるいは肥料として海藻を採取した。

天保三年に近江証人 階堂氏が宿の西で酒造を始める。他に上神明の堀川家では染色をおこなっていた。

摩詞耶寺、大福寺では納豆を作るため、それぞれ５石ずつの御納豆領除地があった。

遺跡・遺物

本陣　『大概帳』によれば、西町に本陣一軒があった。建坪に九五坪で門構、玄関附とある。代々小池八左衛門が務める。

脇本陣　西町にあり、三ヶ日の旧家石川氏が務める。当家は代々苗字・帯 刀を許可され、宿内で大きな権力を持っていた。

問屋場　東町にあり、人馬継立の業務を行う。脇本陣の石川家が兼帯した。 気賀、嵩山、黄柳野（つげの）、奥山方面への継立を行う。

大谷一里塚　大谷村と佐久米村との境界にある。江戸より七〇里目の塚。 佐久米村の塚には木がなく、大谷の塚には松が植えられていた。

三ヶ日一里塚　江戸より７１里目。左の塚は三ヶ日宿内にあったが、樹木 はないようであった。右の塚は宇志村にあり、松が植えられていた。塚の大 きさは五間四方であったという。

旅寵千鳥屋　東町にある。江戸時代より料理屋兼旅龍である。『大概帳』 には旅寵は蔵屋、池田屋をはじめ四軒とある。宿場に泊まる旅人が多い場合 は、禅宗寺院江雲寺へ泊まることもあった。

浜名惣社神明宮　三ヶ日大輪山にある。祭神は浜名地方の首長であった浜名県主の祖神。本殿が板倉造り、俗に井籠造りという独特な建物である。

大乗山摩詞耶寺　摩詞耶字乾山にある。神亀三年に行基が開くという。千 手観音立像、不動明王立像、阿弥陀如来座像、金剛力士像は、池泉舟遊式逢 来庭園とともに国、または県指定の文化財となっている。

昭和三十三年、只木の石灰岩採石場から三ヶ日人の人骨が発掘され、当地 一帯には洪積世にすでに人類が住んでいたことがわかる。奈良時代には伊勢 神宮の神領、鎌倉時代は浜名氏の私領。江戸時代には東方の東浜名地区は天

領、浜松、吉田両藩領、高家大沢領、内野近藤氏の領地が入り交じっていたが、西方の西浜名地区は浜松藩領、内野近藤領地に二分されていた。明和元 年（一七六四）に三ヶ日宿が幕府直轄となり、それ以来街道の要地として栄 えた。その時の宿高は四二三石五斗七合であった。なお、三ヶ日宿の助郷は 三ヶ日・宇志・津々崎・岡本・摩詞耶・只木・大福寺・平山・釣・日比沢・ 本坂・鵺代（北脇）・南脇・下尾奈・上尾奈・都筑・野地・駒場・大谷・大 崎・佐久米の２１村であった。

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　「四辻交差点」先、左側の小池本陣跡には説明板のみ、石川脇本陣も本陣向側の「四辻交差点」角に有ったと言われているが、両方の建物等は残っていない。本陣には八代将軍吉宗の生母浄円院や1805年にはウォーキングの神様、伊能忠敬も宿泊し「家作よし酒造をなす」としている。
　本陣跡近く、道路左にある酒屋さんの店先に「杜香（とこう）の井戸、江戸時代の酒造りの井戸、ご自由にお入り下さい」の、案内板があり案内に従い店横の路地に入ってみた。其処には比較的新しいが、立派な感じの屋根付車井戸を見る事が出来た。元は酒造りに使用された井戸らしい。俳号を「杜香」としていた、此処の先祖から名付けられたようだ。

（三ヶ日宿）人口467人、家数93軒、本陣1、脇本陣1、旅籠4軒（天保年間）

三ヶ日宿は短い、「釣橋川」を渡る附近では家も疎らになり、橋の袂にある公園には「引佐峠」で鳴いたとされる象の絵があった（写真1）。此の川には江戸時代、橋は無く、大きな飛石を渡って通行したが、大名行列等が通行する時は組立て式の橋を架け、普段は分解して橋小屋に保管していたという。最初の分岐を「三ヶ日高校」沿い左方向に進む。（三ヶ日一里塚跡～三ヶ日高校前迄、1.2ｋｍ）
やがて右手に火の見櫓が見えてくる、下には「秋葉常夜灯」（2）が有り、石灯籠は大正、鞘堂は明治の建立である。この先、緩い下り坂になり国道362号と合流する。この辺りを「駄荷野」（だんのー）と呼び「本坂峠」通行荷物の積下しをした所という。

「山論犠牲者供養塔」へ入る道が分からず通り過ぎてしまった。日比沢公民館前の鞘堂は、資料によると床張りで、中の常夜灯は木造で大変に珍しいとあるが、外観だけ写真に写し、中を確認するのを忘れた。チョンボが二つ続いた、今日は注意力が足りないのかもしれない。

立派な山門の「華蔵寺」（3）が見えてきた、曹洞宗の由緒有る寺である。鎌倉初期の「釈迦如来像」や室町期の「大日、阿弥陀如来像」等があるという。堂々たる寺院であった（4）。（三ヶ日高校前～華蔵寺迄、1.6ｋｍ）